Craftwife in Paris. クラフトワイフ、パリへゆく。



2011年5月末にパリで開催されたイベント「L'EXPERIENCE JAPONAISE2011」にCraftwifeをお誘いいただきました。とても楽しいイベントだったので、 レポートしてみたいと思います。

【LEX : L'EXPERIENCE JAPONAISE2011】

「L'EXPERIENCE JAPONAISE」 (以下LEXと略す)は、日本のユニークな音楽やデジタルアート、 文化をフランスに紹介するフェスティバルです。この名前はフランス語で、英訳すると「The Japanese Experience」(日本の体験)といった意味です。

ライブパフォーマンスを中心に、映像作品の上映やワークショップ、物販も行われまています。 2007年と09年にはフランス南部のニームで5日間に渡りって開かれ、YMCKやDE DE MOUSE、 明和電気らが出演していました。三回目を迎えた今年は規模を縮小し、パリに新しくオープンしたばかりのメディアアートセンター「 LA GAITE LYRIQUE」(ラ・ゲテー・リリーク)で2日間に渡り開催されました。


オーガナイザーのFranckさん、私とドラびでおの一楽さん

このイベントの面白いところは、アーティストの知名度に関わらず、キュレータが面白いと思った作品が集められている、 という点です。Craftwifeの様な無名で活動歴の浅いグループ から、 東京パノラママンボボーイズの様にメジャーで長く活動されてきた方までが同じステージに立つ、 というイベントはあまり他にはないように思います。

一日目は、私の出演させていただいたコンサート、映像上映、演歌についてのワークショップが行われました。コンサートには、私、 iPhoneでオーディオビジュアルテクノポップを奏でるCraftwife、ドラムで映像をトリガーし、 ハードロックな世界を構築するドラびでお、かぶり物をしてエレクトロパンクを演奏するDe!nial、 エレクトロなマンボで会場を楽しませてくれる東京パノラママンボボーイズの4組が出演しました。

ドラびでおさんのパフォーマンスは、ドラムを叩くと音や映像が再生されるというシステムを使い、パワフルな音楽に、 なじみのある映像が切り刻まれ当てはめられるのは実にコミカルでシュールです。 観客がもっている音楽や映像への既成概念を破壊させるような作品でした。


De!nialのカッコ良い&可愛い演奏

De!nialは、諸事情によりメンバー3人でのステージ。 ふさふさのかぶり物をしてハードコアなエレクトロパンクを奏でていました。ちいさなお子様に大人気で、 Plasticsを思わせるようなダンスを踊るメンバーが居るいっぽうで、 まったく微動だにしないメンバーもいたりして面白かったです。


エレガントさの漂うラテン音楽を奏でる東京パノラママンボボーイズ

ライオンの「ごきげんよう」のテーマ曲の演奏でおなじみの東京パノラママンボボーイズのライブを観るのは、これが初めてでした 。DJコモエスタ八重樫さんのキックやベースの重低音とおしゃれなコードに、 パラダイス山元さんとゴンザレス鈴木さんのパーカッション。貼付けたような笑顔で踊りながら演奏し、 会場を盛り上げていく姿にはちょっと感動しました。私はライブの後で疲れていたのですが、これはもう踊らずには居られない、 本当に楽しいステージでした。

二日目の午前中は、東京パノラママンボボーイズのパラダイス山元さんによる焼き餃子作りのワークショップ!が開かれました。 その様子を見学してみましたが、古い建物のなかで、 パリっ子のみなさんが食べた事もないものを見よう見まねでおそるおそる作っている様子は、なんだかとても不思議。 わたしは食べる係として参加、ぱりっとして美味しうございました。(パリだけに... ちなみに餃子は中国から伝わった食べ物ですが、本場では水餃子として食されることが多く、"焼き" 餃子は立派な日本の典型的な文化 ... 島の外から伝わったものをアレンジして自分のものにしてしまう... だと思います。)


1800年代の建物で餃子を作るとは...ニラとにんにくの匂いが漂っています。

包みあがった餃子は、LA GAITE LYRIQUEの前でパラダイス山元さんが焼き上げました。いただきます!


夜にはギターとボーカルで古い日本の歌謡曲をじんわりと聴かせてくれる泊(とまり)、



ガレージローック& サーフミュージックバンド、the 5,6,7,8(ザ・ファイブ・シックス・セブン・エイツ、 タランティーノの映画に楽曲が使われたことで有名な3人組の女性バンド)のライブがあり、会場は賑わっていました。




ロビーでの物販も充実してい、Franckさんのレーベル「SONORE」や、日本のアンダーグランドな作品を扱うパリのショップ 「 ビンボータワー」、日本映画DVDを販売するブースが並んでいました。( 私はここで古い日本のテレビコマーシャルを集めたDVDを購入しました。)


Kaseoさんの「ピカルミン」も鎮座



【LA GAITE LYRIQUE】


会場のエントランス、おしゃれです

会場であるLA GAITE LYRIQUE(ラ・ゲテー・リリーク)は、1862年に建てられた古い大衆向けの劇場を改装し、 今年3月にオープンしたばかりのフランス初のメディアアートセンターです。名称は、建築当時の名前を引き継いるそうで、 日本語や英語には直訳できない、と言われました。ポンピドゥセンターから徒歩10分ほどの場所にあり、 パリの中心部に位置しています。7階建てで総面積13 000m²の大きな施設で、昨年ここを見学に訪れた真鍋大渡さんが言っていた通り「都会にあるファンシーなYCAMという感じ。 」です。 LA GAITE LYRIQUEについては、GQ JAPANさんのサイトに詳しく紹介されていましたので、こちらも合わせてご覧ください。

- GQ JAPAN「フランス初のデジタル美術館が巨額を投じて誕生」

フランス語ですが、このビデオもLA GAITE LYRIQUEをわかりやすく紹介しています。


様々な形態のデジタルカルチャーを紹介する目的でつくられ、2つのホールや上映室(130席)の他に、ゲーム体験スペース、 ライブラリーなどもあります。内装はポップで近未来的になっているのですが、唯一カフェだけが昔の内装を残しています。


Game Space ... 大人も子供もゲームに夢中で大盛況した。


映像作品を視聴することのできるブース。


Ressources Center ... アートやテクノロジー、サブカルチャーに関する書籍を1500冊程所蔵。その場で閲覧することができます。

ライブをさせていただいた大ホールには、可動式?のスクリーンが沢山設定してあり、 任意の場所への映像投影ができるようになっています。360度全周囲へのプロジェクションが可能で、 高性能なプロジェクタを多数所有していました。スタッフや音響も素晴らしく、オーディオ・ ビジュアルのパフォーマンスを行うには完璧な場所でしょう。
Craftwifeのライブをギャラリーや美術館のような場所で行う場合には、ホワイトウォールにプロジェクションをしたり、 ライブのためにスクリーンを設置するので、あまり問題がないのですが、 ポップカルチャーなライブハウスやクラブで演奏する場合は、苦労しないことがありません。 こういった場所では、プロジェクションのシステムが軽視されがちで、不自由な場合が殆どです。 「音楽に映像を後づけした」という感じが否めないのですが、Craftwifeではどちらも同等に大事な要素です。 長い歴史を持つPA(音響システム)に比べれば、映像を用いることはまだ歴史が浅いので、当然といえば当然なのかもしれませんが 、 今後音も映像も同じように扱える大衆的な場所(例えば六本木のSupderDexlueのような)が増えていけばいいな、 と思っています。


【Craftwifeのライブ】

Craftwifeのライブは、毎回会場やイベントの趣旨に合わせて、内容を作り替えています。今回も、まずLA GAITE LYRIQUEの会場を調べるところから始め、 ステージにあった映像や音楽を構成しました。 (なおかつ海外での公演だったので、特にシステムの安定感とセッティングがスムーズにできるように、という点も重視しました。) Craftwifeの基本形である、iPhoneを無線コントローラとして音響合成プログラムSuperColliderと映像システムを同期して制御するというシ ステムはそのままです。
映像は、スクリーンの幅が9m近くあった為に、 中野誠也さんにお手伝いいただき、3台のプロジェクタを用いた特別バージョンを制作しました。 中央の映像はCraftwifeの身体に当て照明的に使用し、それをビデオカメラで撮影して、 Max/MSP/Jitterで作ったリアルタイム・サンプリングして、Craftwifeの分身を映し出します。 左右の映像は、音楽の意味的な部分を反映していて、シンプルながら、光として装飾的な役割を果たしています。



自画自賛でお恥ずかしいのですが、ライブはとても上手くいったと思います。 上手くいった、というのは「自分がしたかったことを実現できた」という事で、 過去2,3年で数十回のライブをして、もしかしたら初めてできたかもしれません。 ショックだったのは、(当然ながら)映像は機器によって出力されるものが全く異なってくる、ということ。 いくら素敵な音楽を作りこんでいても、私たちエレクトロニック・アーティストは、 ライブ会場で小さくて音質の悪いスピーカを与えられたら、思い通りの音楽を奏でられないのと同じです。 機器の導入は金銭的な問題があるのでしょうが、それを盾に映像の存在を軽視しすぎているライブ会場もオーガナイザーもアーティストも多すぎるように思います。
2008年のCraftwifeのライブを見たLEXのキュレータに「映像が暗いね」と言われ、とても残念だったことを思い出しました。 オーディオ・ビジュアルのやりやすい場所が増えたら、本当に面白いでしょうし、 Craftwifeも戴いた環境でベストなものをお届けできるように努力していこうと思います。 そして、このような素敵な機会を与えてくれたFranckさんやLA GAITE LYRIQUEにはとても感謝しています。どうもありがとうございました。


イベントの様子はYoutubeの音楽紹介番組「Dotsmann's Show」でもおしゃべりしました、合わせてどうぞ。


dotsman's show vol.131 「LA GAITE LYRIQUEについて」
dotsman's show vol.132 「L'EXPERIENCE JAPONAISEについて」



そして、クラフトワイフ+海外といえば、恒例ティッシュ配り。。シャンゼリゼ通りの凱旋門前にて!





Craftwife 2011.07.21